「Dr.STONE」の稲垣理一郎最高傑作「アイシールド21」
2022年3月7日に発売されたジャンプで堂々の完結を迎えた「Dr.STONE」。
斬新な設定と先が読めない物語展開で間違いなく名作の一つに数えられる漫画となりました。
そしてそして、「Dr.STONE」の原作者稲垣理一郎先生の前作品、高校生のアメリカンフットボールを題材にした「アイシールド21」も負けず劣らずの超名作です。
本日は、主人公セナの合わせ鏡として、作品序盤から中盤にかけて「裏主人公」とも呼べる存在で合った王城ホワイトナイツ桜庭春人の名シーンと名言を紹介していきたいと思います!
泥門デビルバッツの宿敵、王城ホワイトナイツ。
泥門デビルバッツのライバルチームは?と問われた時、9割の読者は「王城ホワイトナイツ」と答えるでしょう。
最初の春季大会で大敗を喫した相手にして、主人公セナの永遠のライバルにして最強のラインバッカー進清十郎、ヒル魔と頭脳戦を繰り広げた高見や、栗田とパワー勝負を展開する大田原誠、不良殺法の十文字と猪狩などなど、各ポジションにライバル的な存在が散りばめられていることもあり、泥門デビルバッツと王城ホワイトナイツの関東大会準決勝は、作中屈指の名試合と言われています。
桜庭はポジション的にはレシーバーでモン太とライバル関係に当たるのですが、チーム内で自分の置かれたポジションに悩みながらも成長していく姿は、セナと近しいものがあります。
デビルヒーローとジャリプロエース。偽物の仮面を被らされた二人。
桜庭と言えば、登場当初はジャリプロモデル兼アメフト選手として登場しましたね。
「モデル業兼任選手」なんて、普通のスポーツ漫画なら強キャラになりがちな設定ですが、桜庭は知名度にそぐわない自らの実力や、同級生の努力する天才、進清十郎に大きな劣等感を感じていたのです。
しかし皮肉にも、逃げ道として始めたモデル業がきっかけとなり、マスコミやメディアは桜庭を「王城のエース」として取り上げ、桜庭は現実とのギャップに大きな悩みを抱えていました。
一方で主人公のセナは、アメリカの名門ノートルダム大附属のエース、「アイシールド21」という称号(設定)を悪魔の司令塔ヒル魔に名乗らされましたが、実際は幼少期からのパシリ生活で走力が磨かれたただのビビり少年で、こちらも作品序盤では偽物の仮面との葛藤が描かれています。
二人の対比が明確に作中で描かれたのは第2巻16話「紙クズ2枚」です。
本話で、二人の明暗がはっきりと分かれます。たとえ偽物だとしても、自分にできる限りの力を尽くそうと決心したセナと、逃げ道であるジャリプロに甘んじてしまった桜庭。
皮肉にも、この紙クズがきっかけとなり、アイシールド21ことセナは不可抗力で桜庭に怪我を負わせてしまう事になります。
虎吉との約束と、高見との絆。
作品序盤ではそんなヘタレっぷりを披露していた桜庭ですが、前述した怪我が原因で入院した病院で、タッチフットの少年虎吉と出会います。
アメフト選手としての桜庭に憧れる虎吉に「王城の真のエースになる」と約束をし、退院後から数ヶ月間の練習では、今までにないほど自分を追い込みました。
しかし、必死の思いで鍛えたのにも関わらず、目に見える成果はほんの少しであることに、天才である進との差をますます感じてしまう桜庭。
アメフト部になんて入るんじゃなかった!5年間無駄にした!
そう口走る桜庭に、先輩である投手(クォーターバック)の高見は、顔面目掛けて拳を一閃。
身長が高いだけの鈍足で、正レギュラーにはなれない。そう中等部から言われてきた高見は、自分の身長を生かせるパートナーをずっと待っていたのです。
「僕は、ちょっと背が高いだけの凡才だ。ラッシュから逃げることも、自分でタッチダウンもできない。一人じゃ誰にも敵わない。だから、ずっと待ってたんだ。高さを活かせる相棒を。凡才の俺が一流の世界で戦える、桜庭春人っていう相棒を…6年間、ずっと待ってたんだ。」
この場面は、高見と桜庭の超名言&名シーンですね。この言葉を物陰から聞いていた桜庭は、ジャリプロモデルにはっきりと区切りをつけ、より一層練習に励みます。
そして桜庭は、高見との身長を活かした「エベレストパス」を武器に、関東屈指のレシーバーへと成長を遂げるのです。
世界大会 vsアメリカ戦。凡人に生まれた男が導いた答え。
世界大会決勝戦。相手はアメフトの雄アメリカ。全日本オールスターの力をもってしても、最終クォーター間際で42対20という点差を付けられていました。
話は少し遡りますが、この戦いの前夜、桜庭とセナが宿舎で話し合うシーンがあります。
「勤勉な天才に、凡人はどうやったら敵うのか?」
かつて桜庭は、進にそう問いかけたことがありました。しかし、進はその問いに答えませんでした。答えられなかったのです。いずれ、進自身もぶつかる壁だと分かっていたから。
光速破りの足を持つパンサーや、ベンチプレス300キロ超の怪物、Mr.ドンをはじめ、対戦相手のアメリカには、人種の壁としか言いようのない強者たちが集っています。
アメリカとの最終決戦は、「凡人は努力で天才の壁を凌駕することができるのか」という、アイシールド21の裏テーマ(だと思っている)の答えが示される戦いでもあったのです。
そして桜庭は試合中盤、アメリカ最強の5人ペンタグラムの中で「人間ドーム」と称される身長2m10cm超のタタンカとマッチアップ。タッチラインまであと少し。高さのあるショートパスでタッチダウンを狙いたい距離。そして、失敗すれば勝ちが遠のく場面でもありました。
「高さなら高見!ほかにおらんだろ。そんくらいバカの俺でも分かるわ!」
王城ホワイトナイツの盟友大田原の進言通り、ワンポイントの選手起用として、世界最強を決める舞台で投手(クォーターバック)に高見が抜擢されます。
「…桜庭。口には出さなくても見てれば分かるさ。お前はいつも思ってる。”俺は遅すぎた。死ぬ気になるのが遅すぎた。”って。そりゃあ早くあがき始めた方がいいに決まってるさ…」
プレーの直前、高見が桜庭に語りかけます。
「でも俺は!少なくとも俺は!泥門戦で桜庭が目覚めてくれて最後に何試合かタッグを組めた。それだけで−王城中高の6年間は無駄じゃなかった!人に、遅すぎるなんてないんだ‼︎」
桜庭が歩んできたこれまでの道のりを全力で肯定し、感謝を口にする高見。そして全ての答えを、1プレーに込めます。
「たった1プレー。桜庭と俺の最後のタッグ。証明してみせる。お前が遅すぎたと思っている後悔の全ては−この1プレーに、繋がっているってことを…‼︎」
超高層の高速レーザーパス「ツインタワー剛弓(アロー)」は、世界最高タタンカの壁を超え、タッチダウンをもぎ取るのです。
凡人が天才の勝てるのか、その答えをイエスと述べてしまえば、きっとそれは嘘ということになるのでしょう。しかし、死に物狂いで研いできた牙は、いつか天才にも届きうる。
このタッチダウンは点数以上に、その大切さを私たちに教えてくれました。
裏主人公、桜庭春人の成長と奇跡。やっぱり勇気を貰えますよね。
アイシールド21には魅力的な天才キャラも多くいますが、桜庭のように、一握りの武器を血の滲むような努力で磨き、花開いたキャラもたくさんいます。
その最たる例が人気No. 1キャラのヒル魔です。この記事に興味を持ってくれた方はぜひこちらも読んでみて下さい!
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